寒い季節がやってきました。
寒さをしのぐために、暖房などの暖かい環境に身を置くということは、一見快適に見えます。がその反面、「免疫力の低下、体温調節機能の低下、血行不良といった肉体的な問題」や「季節感や時間帯の喪失、慢性的な寒さ嫌いといった精神的なストレス」が起きる可能性があります。
なぜそういったことが冬に起こりやすくなるのでしょうか?
夏は早い時間から明るくなり、冬は明るくなる時間が遅くなります。つまり日の長さにより体調が変わり、睡眠時間だけでなく、体温調整も日の長さに影響を受ける自然の摂理があるのですが、根深い原因は現代社会において、昼夜関係なく利用できる簡単で便利な食料品店、そして配達サービスや情報通信サービスといった文明のリズムがあるからです。そのため、どうしても自然のリズムに逆らった生活を「いつでも」してしまいがちになるからです。
私たち人間の活動パターンは本来、冬が来るとエネルギー節約のために活動のペースを落として冬を越すというものでした。このパターンの背景には、活動ホルモン(抗ストレスホルモン)が関係しています。冬が来て暗いうちに起きるようになると、光によって促されるコルチゾールの分泌が少ないために、気持ちが疲れたり沈みがちになることが多く見られます。これは、多くの哺乳類が行う冬眠と似ている点が多くあります。運動も少なくなり、カロリーの高いものを食べるようになり、モチベーションも変化するのです。
一年を通して繰り返される覚醒(活動)と睡眠(休息)のメカニズムは、次の通りです。
朝の光によって副腎からコルチゾールの分泌が促され、抗ストレスのためのエネルギーが湧きます。一方、夜の暗闇によって催眠作用があるメラトニンの分泌が刺激され、睡眠の準備が整うのです。
この光の明暗によって体内で起きるメカニズムを体内時計と呼びます。体内時計はサーカディアンリズム(概日リズム)と呼ばれ、光や闇にさらされることで調節され、睡眠やエネルギーのレベルといった重要な機能を制御しています。
つまり、この冬を快適に過ごすためには、文明のリズムではなく、自然のリズムを活用することが肝になります。
人は昔から季節の変化に逆らう生活をしてきたわけではありません。風土的に見ると伝統として、生活に自然のリズムを取り入れてきた習慣が、名残としてお祭りとして歳時記として、受け継がれています。例えば、古代ペルシャでは、一年で一番長い夜を祝うヤルダー祭が、詩の朗読、スイカやザクロ、闇に打ち勝つ光の象徴としてのロウソクなどを用いて行われていますし、ケルト人も、冬至を内省と新生、そして自然のサイクルとのつながりの日と考え、火のまわりに集まって祝っていたそうです。日本においても「邪気を清めるためにゆず湯に浸かる」、「太陽の再生を祝うために南瓜を食べる」という風習が残っています。
このように、昔から世界的に各地域で、季節の変わり目に季節を知らせる儀式(お祭り)を催してきた事実があります。昔の人の知恵として、季節の変わり目を注意深く観察する、向き合うことで、季節の変化を知り、自分の変化を感じる実践にもつなげていたのです。つまり、環境とのつながりを深めることで、不安を軽くして気分を改善できることを実践していたのです。
冬には薄暗い闇のイメージがつきものですが、考え方を転換すれば、冬の過ごし方を大きく変えることができます。冬とともに生きるには、明るい昼の時間が減ったことの埋め合わせとして、冬至のお祝いをするのもよいと思います。冬のお祝いを計画すれば、注意力が鍛えられるうえ、季節の変化というものは私たちに襲い掛かるものではなく、私たちが迎え入れる祝うものとして、主体性をもってとらえられるようになるのです。
居場所の冬じたくも、形から入るという重要な季節を感じるための環境と繋がる手段のひとつです。冬が厳しくない場所でも夏の服をクローゼットにしまい、きれいな照明を準備すれば、冬は心地よいものだという季節を気持ちよく前向きに受け入れるイメージを持つことができます。
「意図的にそうすることで、実際に薄暗い闇を歓迎し、祝えるようになるのです」
何よりも重要なのは、寒くても外で過ごす時間を持つことです。「冬というリアリティを肌で体感すること」それが、意識を集中することや気づきに繋がる冬を元気に過ごすための大切な方法になります。
結局は、睡眠の質が低下することに一番の問題があります。寝れなくなる要因は、液晶ディスプレーの光を浴び続ける時間が長いほど覚醒時間が伸び、微睡みや眠気が始まりにくくなることが、実験結果でも明らかになっていることからも、問題は明るさの問題なのです。
まずは、日の長さにより体調が変わるのであれば、 夜は光を避け闇に身を置くことでメラトニンの分泌を刺激し、脳波の活動が緩やかになるα波やθ波に切り替わりやすくすることです。そして、朝起きたら、太陽の光を手のひらに浴びせることです。太陽の光には赤外線も含まれており、光によってコルチゾールが分泌されるだけでなく、赤外線が体内をめぐり体温を上げてくれます。
早く寝て、太陽を浴びる。光と闇を上手に活用し、寒さから逃げることなく、向き合うことです。