呼吸には一次呼吸と二次呼吸があります。
一次呼吸は卵子の時から行っている「開いたり閉じたり」「伸びたり縮んだり」という規則的な全身的な動きです。
二次呼吸は母親のお腹から生まれてから行う肺へ酸素を取り込むことで酸化を利用しエネルギーを作り出し、炭素を排出する肺の動きです。
厳しい環境に耐えるためには、それに合わせた体内環境にならなくては、耐えることができません。落ち着いた状態をニュートラルとしたときに、行動や感情そのものが負荷(ストレス)になります。
それは仕事に打ち込むとき、集中するとき、気持ちを伝えるために真剣に話すとき、とても寒い中行動するとき、とても暑い中行動するとき、我慢するとき、嫌いな状況から逃げられないとき、泣くとき、怒るとき、笑うとき、立ち向かうとき、痛いとき、ケガをしたときなど、血圧を上げ、血糖を上げ、心拍数を上げなければ行動することができないのです。
そのために、呼吸も使い分けています。
口呼吸と鼻呼吸で、肺の動きは膨張と収縮を繰り返します。
呼吸をコントロールする神経は、太陽神経叢といわれる横隔膜に広がる神経と、延髄という首の部分の神経が大きくかかわっています。脳の中でも延髄を含む脳幹は「覚醒と生命」を維持するために無意識に活動し、心臓の下から胃の裏側に広がる太陽神経叢は「生命の危機」に対応するために感情によって無意識で活動したり、意識的にコントロールしたりします。
恐怖や不安、集中、我慢などに感情が偏っていると、無意識に反射が起きます。
急激な体内の変化に対応するために、酸素を減らしつつ呼吸が浅くなります。この時力むと、いつも以上の力が得られます。
呼吸と無呼吸で作るエネルギーの供給速度にタイムラグがあるからです。
呼吸しながらだと、ミトコンドリアを介して無呼吸の4倍のエネルギーを作り出しますが、生成プロセスにも時間がかかるため、最大限にエネルギーを使うと7、8秒で枯渇します。これは肝臓と腎臓で作られるクレアチンリン酸(PCr)とピルビン酸(糖分解の成れの果て)と脂肪酸を使って筋肉内でエネルギーを時間をかけて生産します。ただ筋肉中のPCrには限りがあるので瞬発的な運動には不向きです。
無呼吸になると筋肉中のグリコーゲン(肝臓にもある)という動物デンプンを分解、ピルビン酸を生成しつつ乳酸化しエネルギーを生み出します。ただし、短時間でエネルギーを生産できるのでかなり瞬発的な運動を可能にします。ただ、副産物の乳酸を分解するために酸素が必要になります。
不眠や頭痛に有効的な呼吸方法
まず息を吐き切る。
吐ききったら4秒かけて息を吸う(PCr)
いったん息を止める(解糖)
8秒かけてゆっくり吐く(PCr)
アスリートが短命なのは解糖系といわれる無呼吸のエネルギー生産ばかりを使いすぎ、筋肉中のグリコーゲンが枯渇し、乳酸分解のために過剰な酸素を取り込むことで酸化が進むからです。
瞬発的な運動の時は、酸素がないような無呼吸状態でグルコースをピルビン酸に解糖し、乳酸化します。反対に瞬発的な運動でない時は、酸素が十分にある呼吸状態で解糖が停止してピルビン酸がアセチルコエンザイムAという脂肪酸の原料になることで、効率的な無限エネルギー生産が可能になります。
解糖系という無呼吸のエネルギー生産を最大限に使うとエネルギーは30秒で枯渇し、疲労物質の乳酸も生産されます。でも運動速度を落として、解糖系を緩やかにすると、2時間以上(※個人差がある)エネルギーを生産できます。
つまり、持久力(スタミナ)をつけるには、無呼吸と呼吸を混ぜた運動が理想的です。
少し「しんどいな」という運動を5分、「リラックスした」呼吸を整える運動を5分交互に行うことでミトコンドリアも増えていきます。無呼吸は筋肉を作り、意識した呼吸運動で脂肪が燃焼されミトコンドリアが再構築されるということです。
呼吸も無呼吸もそれぞれ単独で機能しているというよりは、表裏一体であることがわかるはずです。表が無ければ裏もないのです。表があるから裏もあるのです。意識も無意識もわけるべきではなく、すべては夢も含めて覚醒した状態の延長にある脳の活動です。
意識とは分かりやすく言えば「水中眼鏡」です。水中眼鏡には一定情報しか映し出されませんから、「意識を向ける」とそれにつられてしまうのです。どこに意識を向けるかと言ってもいいのではないでしょうか。音が聞こえていればそちらに意識が向かい、感じていればあちらに意識が向かうのです。それは移ろうものですから、ただ意識するということは視野を狭くします。
そして反復練習はなぜ必要かというと、意識に振り回されなくなるからです。それが疲れないコツであり、意識と無意識の融合だと思います。