「毎日同じことをして飽きません?」と言われました。
確かに変化のない毎日は退屈でしょう。でも変化ばかりを求めてしまうと、いつも違うことをしなくてはと意識してしまい、決めたことを簡単にひっくり返すことになって、自分というものがブレてしまうと思うんです。決めたことをひっくり返すことが日常化していると約束が守れなくなるのです。
臨機応変という言葉は、変化することではありません。
この臨機とは定めた中で起こった突発的な出来事のことです。変化の最中に起こった突発的な出来事は変化そのものなので、この変化の何が良くて何が違和感なのかでさえ気づくのが鈍くなります。反対語に杓子定規という融通が利かない考えや形式に囚われた状態を表す言葉がありますが、やたらと変化を望む人は、方針が崩れるから目標が定まらず何も変われないと思うのです。
武道や茶道、華道といった「道を究める作法」の中に、何物にも動じない集中する自分磨きの姿勢があります。この道とはずっと続いている古い芸という意味ではなく、何度も同じことを繰り返してできるようになる「最善」の態度や言動、身のこなし、雰囲気、振る舞いです。繰り返すことで新たな最善が生まれ、身構えず物事に向き合う素直な心持ちになって、力まず自然に立つその時に合った姿勢になるのではと思うのです。
眠っていても血は流れ、呼吸が止むことはありません。眠っていても地球は刻々と自転公転し、川は流れ、潮は満ち引き、天候も変わっていきます。この世のものは繰り返し巡ることで、その中で変わり続けるものだと思うのです。
繰り返しやらなければ、変わることもできない。やらなければ、できるようにならないのです。