感染経路というウイルスの経路を辿ると、野生動物から感染したもの、家畜から感染したもの、系統進化(レトロウィルス)で受け継がれてきたウィルスなどがあり、それらが人のウィルスに進化したとみなせます。
感染症のはじまりは、人間が野生動物を家畜化した農耕生活による定住が引き金になりました。野生動物の持つウイルスが人間と社会に持ち込まれ、病気を発生させたのです。
狩猟時代は自然と共に生き、どの食べ物に栄養があるのか、どれを食べると具合が悪くなるのか、などを知っていました。農耕に移行することで、放浪生活をする必要がないので女性は毎年出産できるようになります。畑では一人でも多くの働き手が必要だったのです。そのため人口が急ピッチで増えました。狩猟生活では考えられないスピードです。人口が増えれば、畑を広げ、家畜を殖やさなければなければなりません。
当然、人類の排泄物も増えるために不衛生な環境が生まれます。
また、増え続ける人口のために食べ物を貯蔵することになり、それを餌とするネズミはノミやダニを通して「感染症」という細菌やウィルスを拡げるようになりました。
農業による豊かさの反面、リスクとして以下のものがあるのです。
①人々が集まることで感染症が広まりやすい。
②家畜から伝染病が起こりやすい。
ラクダから天然痘、牛から麻疹が発生したように…
③丸一日手間暇がかかるため、余暇が減る。
④生産する品種が少ない為栄養が偏る。
⑤食料が作れなくなると飢饉が起きる
⑥格差社会(特定の人達への権力集中)
⑦人口に食料生産が追いつかなくなる。
⑧魚の乱獲 繁殖量を上回る漁獲量
⑨森林伐採 大地の浸食、砂漠化
⑩水紛争
など・・・
系統進化とともに受け継がれたウイルスの代表的なものにヘルペスウィルスがあります。ヘルペスウィルスの特徴は持続感染することです。それがいることで他の菌に感染しにくくなっているという研究結果もあります。我々が感染している単純ヘルペスウィルスや水痘ウィルスはいずれも神経細胞に一生の間、持続感染しています。人の唇などに潰瘍を作る単純ヘルペスウィルスも、帯状疱疹の原因になる水痘ウィルスも元をただせばすべて動物由来です。
現代社会では、森林破壊や都市化により野生動物と人間社会の距離は短縮し、それが動物のウイルスに人が感染する機会を増加させています。そのほか、グローバリゼーション、大規模養鶏による公衆衛生基盤の破綻など、いずれも現代社会が抱えている問題で、それが本来は野生動物と平和共存しているウイルスをキラーウイルスに変化させていることになります。
最近、ウイルスがほ乳類の存続にきわめて重要な役割を果たしていることが明らかにされました。 それは「人内在性レトロウイルス」です。このウイルスは霊長類の祖先の染色体に2500万年前に組み込まれたウイルスで、まさに化石のような存在と考えられてきました。一方、人の胎児は母親と父親の両方の遺伝形質を受け継いでいます。父親由来の形質は母親にとっては異物ですから、本来ならば臓器移植の場合と同様に、免疫リンパ球により排除されてしまうはずです。その母親由来リンパ球による攻撃を胎児から守っているのは、胎盤の外側を取り巻く合胞体栄養膜です。この膜は胎児の発育に必要な栄養分を通しますが、リンパ球は通しません。この膜のおかげで胎児は発育できるのです。この重要な膜はシンシチンと呼ばれるタンパク質により形成されますが、最近シンシチンは人内在性レトロウイルスの産生するタンパク質であることが明らかにされたのです。
また、ウィルスが侵入することで
- 血液循環の促進
- 沈着した金属毒素の排出
- 熱の発散
が起こります。
金属毒素、特に鉛や水銀は普通に生活する中でからだに蓄積していきます。沈着した金属毒素は細胞に死、または機能障害や増殖阻害を引き起こします。細胞が活性化するためにウィルスを招き入れてまで「炎症」を起こそうとします。尿や便で足らない解毒を熱とか下痢とか湿疹を使って二次的に排出しようとするのです。
環境の変化に対応するのが病気であり、それを担っているのがウイルスであるのです。
ウィルスは私たち生命の進化に欠かせない不可避的な一部です。それを根絶したり撲滅したりすることはできません。私たちはこれまでも、これからもウィルスを受け入れ、共に調和的に生きていくしかないのです。